ゲーム本編に沿ったヴィンユフィ出会い編。
ネタバレ多数です。
ネタバレ多数です。
立ち並ぶ家々、村の中心には給水塔。
誰も住まない大きな屋敷、そしてニブル山へと続く道・・・。
「村、なくなったって、誰かから聞いたよ!」
焦げ茶色の髪を持った少女、ユフィはそう言って、辺りを見回した。
5年前、この村はある事故によってすべて燃え尽きてしまったと言われているが・・・。
「・・・ああ」
「クラウド・・・・・・オイラたちにウソついた?」
赤いたてがみを持った炎の魔獣、ナナキ(通称レッド13)は横に立つ青年に声をかけた。
「俺はウソなんか言ってない」
そう強気で言い切るクラウドと呼ばれた元ソルジャーは、大きく首を振った。
「俺は覚えてる・・・・・・あの炎の熱さを・・・・・・」
絞り出すように声を出すクラウド。
あたりは不気味なほど静まり返っている。
ユフィとナナキはなんだかわからない、という仕草をした。
「ま、とりあえずさ、休まない?ここまでくるのに結構疲れたし」
そう言ってユフィは宿の看板が出ている家を指さした。
「・・・そうだな」
クラウドは軽くため息をつき、宿に向かって歩き出した。
その後についていくユフィとナナキ。
「はい、いらっしゃい」
クラウド達が中にはいると、30過ぎくらいの宿の主人が声をかけた。
「・・・泊めてくれ」
クラウドは明らかに機嫌が悪そうな顔をしながらそう言った。
「一泊100ギルになります。よろしいですか?」
クラウドの周りの全員が、彼を見た。
「・・・しばらくここにとまる。前金、700ギルだ」
そう言ってクラウドはカウンターにお金の入った袋を置いてから、外に出た。
「あらら、行っちゃった・・・」
ユフィが呟く。
「おっちゃん、そう言うことだから、部屋借りるね」
ナナキがカウンターに手を突いてそう言ったものだから、店の主人はちょっと驚いた。
しかしすぐに営業用の顔に戻って、
「はい、ありがとうございます」
袋を大事そうにカウンターの奥へとしまった。
「ねぇねぇおっちゃん、この辺にマテリアたんまりありそうな所、ない?」
ユフィがカウンターに手を突いて聞く。
主人は少し眉をひそめたが、
「そうだねぇ・・・ニブル山にはもう使われない魔晄炉があるし・・・昔神羅の人間が使っていた屋敷もこの村の奥にあるし・・・」
その話を聞いてユフィの目が輝く。
「ホントホント!?」
「ユフィ、ユフィ」
と、いきなりナナキが水を差す。
「ダメだよ、勝手な行動しちゃ。クラウドが帰ってくるまで待とうよ」
ナナキのその言葉にユフィはぶーっ、と頬を膨らました。
ユフィ達が食事を終えて部屋に戻ってくると、クラウドが宿に戻っていた。
「クラウド!この村の外れにあったあのでっかい屋敷って何?」
いきなり目を輝かせたユフィに聞かれたものだから、たじろぐクラウドだが、
「あそこか・・・?」
クラウドはユフィを制しながらベッドに座る。
「あれは俺が小さいときから神羅の人間が使っていた屋敷だ。
確か神羅屋敷って呼ばれていたな」
あやふやな記憶を引っぱり出しているかのような表情で、クラウドは言った。
「そのまんまじゃん。ネーミングセンスわりー」
「知るか!・・・それで、何でそんなこと聞くんだ?」
クラウドがそう言うと、ユフィはますます目を輝かせて、
「だってだって、神羅の人間が使ってたなら、もしかしたらマテリアがざっくざっく」
両手を軽く広げて、楽しそうに言うユフィ。
「あのなぁ・・・」
頭を抱えるクラウド。
ベッドの上で丸まっていたナナキは、
「ユフィてばあそこ探索しに行くって聞かなくて、やっとオイラが押さえたんだよ」
ベッドに顔を埋めたまま、しっぽを振る。
「えー、神羅の研究所なんて、それこそ探りがいのありそうな場所じゃない」
ナナキのいるベッドの上に乗り、ナナキの顔をのぞき込むユフィ。
「何があるかわかんないじゃないか」
「それが楽しいんじゃないの!」
ナナキの言葉に、すかさず答えるユフィ。
「モンスターとかきっといっぱいいるよ」
「全部倒す!」
進むか進まないのかわからない言い合いが続く。
「だぁっ!いい加減にしろ!」
そんなやりとりを聞いていたクラウドがいきなり叫んだ。
びくっと肩をふるわし、目を点にするユフィとナナキ。
クラウドはユフィの額に人差し指をつけ、
「とにかく!ここにしばらくは滞在するが、ユフィ、絶対一人であの屋敷の中には入るんじゃないぞ」
「えーっ!ちょっとぐらい・・・」
「だめだ!」
いつになく強い口調のクラウド。
「・・・はぁーい・・・・・・」
ユフィは渋々返事を返した。
真夜中のニブルヘイム。
「・・・ばれなきゃいいのよ、ばれなきゃ」
神羅屋敷の近くの草むらから、ユフィが顔を出した。
昼間クラウドに言われたことが、かえって彼女の好奇心を刺激したようだ。
ユフィは足音をたてずに神羅屋敷の入り口に近づく。
「・・・うーん・・・」
入り口の鉄の門は、かなり錆び付いていた。
−音・・・立つよね・・・。
しばらく考え込んで、ポン、と手を打つユフィ。
ユフィは腰のホルダーから緑色のマテリアを取り出した。
そして右腕のカーボンバンクルにそれを装着する。
「ミニマム」
知識ある言葉を彼女が発すると、見る見るうちに彼女の体が小さくなった。
「よし」
鉄格子の隙間から屋敷の敷地内へ入り込むユフィ。
そしてドアまで走って近づく。
ドアは閉まりにくいのか、少し透き間が空いていた。
そこから中に入るユフィ。
「ミニマム」
もう一度魔法を唱えて、元のサイズに戻るユフィ。
「魔法と頭は使いようってね」
ユフィはそう呟いてから、自分の武器と防具にマテリアを装着し直した。
−さーて、どこから調べようかなー。
ユフィはわくわくしながら辺りを見回す。
屋敷の中は広く、天井からは錆び付いたシャンデリアが下がっていた。
ひび割れた窓からは、月明かりが差し込んでくる。
しかしあたりは暗い。
ユフィは慎重にあたりを確認しながら、まずは一番近い左の部屋へと入った。
そこには窓もなく、光は少ない。
ユフィは腰のホルダーから、手のひらにすっぽり入る、短い松明を取り出した。
「ファイア」
魔法の言葉と共に、松明に灯がともった。
あたり1メートル四方が明るくなる。
ユフィはきょろきょろと見回す。
何歩か踏み込むと、ユフィの足に何かあたった。
そこには床に少し色あせた紙の袋が無造作に落ちていた。
−手紙?
彼女はかがんで手紙を拾い、裏を見る。
そこにはローマ字で「Houjou」と、殴り書きされていた。
ユフィは眉間にしわを寄せながら中をあける。
そしてワープロで打たれたその手紙を読みはじめる。
『私の研究の邪魔をする者を全て取り除かなければならない。
タークスのあの男も例外ではない。
私はタークスの男に生態学的な改造をほどこし、地下に眠らせた。
もし興味があるなら探してみるがよい。
ただし・・・・・・これはあくまでも私がきまぐれでおもいついたゲームにすぎない。
無理につきあってくれる必要はない』
手紙は二枚あるようだ。
「次は・・・と」
『金庫のダイヤルはしんちょうにかつ、すばやくまわす。20秒以内だ。
少しでも行き過ぎてはいけない。
4つのダイヤルのヒントは・・・・・・。
ダイヤル【1】のヒント 酸素が一番多いハコのふた
ダイヤル【2】のヒント 空のない白と黒のウラ
ダイヤル【3】のヒント 2階のイスのそばのユカのきしみ・・・・・・
そこから左5歩、上9歩、左5歩、上6歩
』
「・・・人間?」
ユフィは首を傾げた。
そしてもう一度手紙を読み返す。
しばらくの沈黙。
「・・・・・・・・・んっふっふっふっ」
ユフィは少し肩をふるわして小さな声で笑い出した。
「よっしゃあっ!!これこそお宝の極意っ!!」
大きくガッツポーズをし、誰もいない空間に向かって叫ぶユフィ。
・・・ユフィはすでに自分の旅の本当の目的を忘れているようだ。
「この暗号を説けばいいのね・・・」
と、手紙の暗号の部分を読み返しているとき、ユフィは何か妙な違和感を見つけた。
−なんか、色違う。
持っていた松明を紙に近づける。
と、いきなり焦げた。
「うおっ!?」
びっくりして松明を落としそうになるユフィだが、ふと気づいて、
−あぶり出し?
そう思ったユフィは、その部分に下から松明を近づけてみる。
すると、
『ダイヤル【4】は【右:97】』
という文字が浮かび上がってきた。
「ふむふむ」
顎に手を当て考えるユフィ。
そして、手紙を手にその部屋を出た。
部屋を出て、ユフィは辺りを大きく見回す。
「とりあえず一番近い階段にでも行きますか」
そう呟くと、ユフィは階段に向かって走っていった。
階段を上ると、廊下が左右に分かれているのが目に入った。
「どちらにしようかな・・・天の神様の言う通り・・・」
言葉にあわせて指を左右に振り、
「よし、左」
ユフィは進行方向を左にとって、歩き出した。
松明の光だけを頼りに、暗い廊下を歩いていると、
「キシャアァァァッ!!」
突然ユフィの前に、カボチャの顔を持ったモンスターが5体現れた!
「うおおっ!!モンスターなんていたの!?」
いきなりのことであわてながらも、武器の風車を構えた。
一瞬の沈黙。
先に仕掛けたのはモンスター、ファニーフェイスだった。
ファニーフェイスは大きく息を吸い込んだと思うと、紫の霧を吐き出した!
「うぐっ・・・!」
口を押さえるユフィ。
司会が霞む。頭痛がしてくる。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
ユフィは大きく叫んで、霧を振り払った。
「こんのぉ!!」
ユフィは武器につけたマテリアに意識を集中する。
「サンダラ!」
激しい雷撃がファニーフェイスを襲う。
そのダメージに耐えきれず、3体が消滅する。
しかしまだ2体が残っていた。
「ムカツク!」
残ったファニーフェイスがユフィに体当たりをかました。
「あうっ!」
見事に顔面ヒット!
と、すかさずカウンターを返すユフィ。
悲鳴を上げながら、消滅するファニーフェイス。
「あと一体!」
ユフィは振りかぶって風車を投げた。
風車の刃は見事にファニーフェイスに直撃し、消滅する。
ユフィの手元に戻ってくる風車。
「やったぁ!」
ぴょんぴょんはねて勝利を喜ぶユフィ。
「て、喜んでる場合じゃない」
ユフィは投げた松明を拾い、先に進む。
廊下が終わると、部屋の入り口が3つあった。
まず、左の部屋をのぞき込んでみる。
そこには古ぼけたベッドが3つあった。
−・・・違うか。
今度は正面の部屋をのぞき込んでみる。
そこには観葉植物と、宝箱があった。
「やった」
ユフィは早速宝箱をあける。
中に入っていたのはユフィには必要のない物だった。
「なんだぁ」
残念そうに蓋を閉めようとするユフィ。
と、その手がとまった。
−酸素の多い・・・。
ユフィは手紙を読み返す。
そして宝箱の蓋の裏を覗き込んだ。
【左 36】
「あったあっ!」
という風にユフィは次々と数字を見つけ、とうとう金庫のダイアルをあけた。
そこから飛び出してきたのは、またしてもモンスターだったが。
「全く、このユフィ様にかなうヤツなんていないんだよーっだ!」
ロストナンバーの残骸にそう言い残して、ユフィはその横にあるマテリアに近づいた。
「おお!召喚マテリア!」
ユフィが拾った赤いマテリアは、ユフィにその知識を送り込んだ。
「・・・オーディーンか。いいもん手に入れちゃった」
そう言ってユフィはマテリアを軽く上に投げてから、自分のマテリア入れにしまった。
「もう何かないかなー」
金庫の中をのぞき込むユフィ。
「おっ?」
そこには金色に光る鍵が無造作に置いてあった。
「・・・もしかして」
ユフィは北条の手紙を読み返した。
そして鍵を握りしめて、一目散にどこかへ向かって走り出した。
「地下室ー!地下室ー!」
手当たり次第部屋をのぞくユフィ。
「もー!どこだー!」
ユフィは一番最後の部屋に飛び込んだ。
そこには、ベッドと本棚、それに壁に目立たないように細工されたらしいドアがあった。
「よっしゃー!ここだっ!」
ユフィはそのドアを開け、その下に広がっている螺旋階段を駆け下りた。
すごい勢いで走るユフィ。
「うう・・・ぐるぐる回って気持ち悪い・・・」
多少の胸焼けを覚えながら、ユフィは地下に降り立った。
地下は暗く、松明の光だけでは心もとない。
ユフィは微かな光だけを頼りに、地下道を歩いた。
そして、奥の方にドアが二つあるのを見つけた。
「どっちかだね」
ユフィは立ち止まって、少しうなる。
しばらくうなった後、
「鍵がかかってたら、そのドアが正解って事だ」
何とも当たり前なことに気づいたユフィは、まず隣にあった赤っぽいドアに手をかけた。
ドアノブをひねる。しかし開かない。
ユフィは思いっきりひねってみる。でも開かない。
「おおっ!ビンゴ!」
ユフィは鍵穴にさっき見つけた鍵を差し込む。
少し錆び付いたような音がしたかを思うと、以外にもあっけなく鍵は開いた。
ユフィはそっとドアを開ける。
開けたとたん、ユフィの表情が凍った。
あちこちに散らばる人骨、朽ち果てた棺桶、その中に眠る異形の生物・・・。
それは、ここでどんな実験が行われていたかを物語っていた。
神羅、いや北条の狂った研究心も。
ユフィは少しの間硬直していたが、
「骨なんかで・・・びびってどうする!!」
気合いを入れ直し、意を決して中に入るユフィ。
−モンスターが飛び出てきたりして。
その考えをすぐにかき消す。
と、何かが聞こえてきた。
びくうっ!と肩を震わすユフィ。
しかしよくよく聞いてみると、それは人間のうなり声だった。
うなり声と言うより、うなされているような声だ。
−やっぱり、誰かいる!
その声の出所をたどるユフィ。
ゆっくりと奥に入っていくと、その声は大きくなっていく。
そして一番正面にあった棺桶にたどり着いた。
「もしもーし」
ユフィはおっかなびっくり棺桶の蓋を叩く。
何も反応がない。
「もしもーし!!」
がんがんがん!と乱暴に蓋を叩く。
と、うなされ声が止まった。
「・・・・・・私を悪夢から呼び起こすのは」
棺桶の中から低い男の声が聞こえてきた。
「誰だっ!」
ばん!と棺桶の蓋が跳ね上がる。
思わず後ずさるユフィ。
棺桶の中の男が上半身だけ起きあがる。
その姿を見て、ユフィは思わず息をのんだ。
流れ落ちる長い黒髪。
額に無造作に巻かれた赤いバンダナ。
面長の整った顔立ち。
そして、
切れ長で冷たい光を放った赤い瞳。
−うおおっ!めちゃくちゃ美形っ!
心の中で叫ぶユフィ。
「・・・・・・見知らぬ顔か」
その声にはっとするユフィ。
「出ていってもらおうか」
いやに冷静なその低めの声に、ユフィは少しむっとくる。
「何よ!」
そう言って棺桶に近づくユフィ。
「アタシがどんなに苦労して、ここの鍵を見つけたって思ってんのよ!?」
ユフィは腰に手を当て、仁王立ちでその男を見下ろした。
さすがに男もこの行動に驚いたらしく、目を点にしている。
「だいたい!隠されたキャラクターっていうのは、見つけた人を感謝して、仲間になりましょうってのが相場じゃないの!?」
びしっ!と男に向かって指を突きつけるユフィ。
「なんの話だ・・・それは・・・」
「昔マンガで読んだ」
それを聞いて、男はため息をついた。
「・・・変わった奴だな。お前は」
頭を抱え、もう一度ため息をつく。
「だいたいねー、人と話するときくらい棺桶から出てきなさいよ!」
暗く重い空気に閉ざされていたこの部屋が、ユフィの場違いな口調で明るくなったような気がした。
「・・・・・・」
すでにユフィのペースに乗せられていることに、いささか不満を覚えながらも、男は棺桶から出て立ち上がった。
座っていたのでよく分からなかったのだが、男はかなりの長身だ。
ユフィと比べてみても頭一つぐらい、身長差がある。
ユフィは一瞬たじろいだが、すぐにいつもの調子に戻って、
「あんた、何者?こんなところで寝てるなんて、ふつうの奴じゃないだろうけど」
ユフィの言葉を聞いて、男は何か言いかけたが、
「あ、こういう場合はアタシから名乗るもんか」
こういうときの彼女は、何故か自己中心的ではない。
「アタシ、ユフィ・キサラギ。世界一のマテリア・ハンター」
胸を張り、男を見上げ、元気よく言うユフィ。
「・・・マテリア・ハンター?」
聞き慣れない言葉に、男は眉をひそめた。
「ずいぶんと怪しい職業だな」
「ほっといて!
それより、アタシが名乗ったんだから、あんたも名乗んなさいよ」
ころころと表情の変わるユフィを見ていると、男の警戒心は少しずつ緩んでいった。
「私は・・・・・・元神羅製作所総務部調査課、通称タークスの・・・・・・」
少しの沈黙。
「ヴィンセントだ」
その男、ヴィンセントは表情を変えずにそう言った。
「タークス?」
あまり好きではないその単語に、ユフィは眉をしかめた。
「元タークスだ。今は神羅とは関係ない」
「ふむふむ」
その言葉を聞いて少し安心したのか、ユフィは一人頷く。
「そういや宝条の手紙にもそんなこと書いてあった・・・」
「宝条だと?」
今度はヴィンセントが眉をひそめる。
「お前、宝条を知っているのか?」
初めて、彼の顔に怒りに似た表情が浮かんだ。
いきなりのことでちょっと驚くユフィ。
「ちょ、ちょっとね。この前、コスタ・デル・ソルで見たもん」
「宝条・・・」
そう呟いて、ヴィンセントは何か嫌なものを思い出したかの様な顔をした。
「ねえ、何であんた、いや、ヴィンセントだっけ。こんな所で寝てんの?」
ゆっくりぐるぐると、ヴィンセントの周りを回るユフィ。
「・・・何故答える必要がある?」
「聞きたいから」
「・・・・・・」
当たり前と言えば当たり前な回答である。
ヴィンセントは、この娘が好奇心のみで行動していることを察した。
「・・・この屋敷は、悪夢のはじまりの場所だ」
虚空を見つめ、重い口を開くヴィンセント。
「・・・・・・昔、この屋敷では神羅カンパニーがあるプロジェクトを行っていた」
神妙な面もちで、ヴィンセントの話に聞き入るユフィ。
「ジェノバ・プロジェクトと名付けられたそれは、ある古代種を復活させることを目的としていた」
「ジェノバ?」
クラウドたちがよく言っていた言葉だ、と、ユフィは思った。
「・・・・・・そして、ある女性が実験台として自ら名乗りを上げた」
ヴィンセントの表情が、微妙にゆがむ。
「彼女の名は、ルクレツィア」
ユフィは、ヴィンセントの目が一瞬細くなったのを見た。
「・・・ルクレツィアは、ジェノバ細胞を埋め込んだ子供を産むこととなった」
淡々と語るヴィンセント。
「私はその人体実験に反対した。しかしそれでも、彼女と研究者の研究欲は消えなかった」
そこでヴィンセントは一旦言葉を切った。
長い沈黙が地下室を包む。
「・・・それで?」
ユフィはその沈黙に耐えきれず言葉を発した。
「・・・・・・しばらくして、ルクレツィアに子供が産まれる・・・」
ユフィは口の中の唾液を飲み込む。
「その子供の名は・・・セフィロス」
「セフィロス!?」
ユフィは思わず声を上げた。
「・・・セフィロスを知っているのか?」
問われて言葉を返せないユフィ。
彼女は知っているのだ。
自分の故郷を焼き尽くした相手の名を。
「・・・新聞とかで見たの。有名だもん、英雄セフィロス」
あえて彼女は話を濁した。
「それより、セフィロスが生まれて、どうなったの?」
「ああ・・・」
ヴィンセントは軽くため息をはく。
「私は、実験のことで研究責任者の一人、宝条に抗議した。
何故あんな、人体実験を実行したのかを」
ヴィンセントは右手を口元に当てた。
「そのことで争論となり、宝条は私を殺した」
「??」
ユフィはすこし混乱した。
その時ヴィンセントが死んでいるのなら、ここにいるヴィンセントは何なのか?
「宝条は私の脳だけをそのままに、体を改造した」
ユフィは手紙の内容を思い出す。
「・・・・・・次に目覚めた私が見たものは」
ヴィンセントは首を振った。
「怪物と化した自分の姿だった・・・・・・・・・・」
また、沈黙があたりを覆う。
ユフィは何かの感情に襲われていた。
「・・・そっか。それでここで寝てたって訳か・・・」
ユフィは頭をかく。
「全く、宝条ってとことん変な奴だよね!
女の子はべらかしてたって思ったら、改造趣味まであったなんてっ!」
ユフィは、何か解らないこの感情を振り払うかのように言う。
「今度あったら、アタシが殴り飛ばしちゃるっ!」
シュシュシュ、と空で拳を切るユフィ。
そんなユフィを見ながら、ヴィンセントは疑問を感じた。
何故この話をしてしまったのか?
自分の中で封印していた、この悪夢のような話を。
「いや、リミットで吹き飛ばした方が気持ちいいかな・・・」
何故自分はこんな娘に話してしまったのか?
しかし、いくら考えてもその答えは出なかった。
代わりに、もう一つ疑問が浮かんだ。
「お前・・・私が怖くないのか?」
いきなり聞かれ、目をぱちくりするユフィ。
「怖いって・・・何で怖がる必要があんの?」
ユフィはヴィンセントの顔をのぞき込む。
「いくら過去が暗くたって、こーんな美形さん怖がっちゃもったいないじゃない」
ユフィらしい答えが返ってきた。
ヴィンセントはそれを聞いて、思わず頬が緩んだ。
「あ、笑った」
はじめてみるヴィンセントの笑顔にユフィもつられて笑顔になる。
「やっぱり・・・だよね」
ユフィは一人で何か呟いてから、
「ねぇヴィンセント、アタシ・・・いや、アタシ達と一緒に行こう!」
ユフィは、ヴィンセントの赤い瞳をのぞき込み、そう言いきった。
「・・・は?」
長い沈黙の後、ヴィンセントはそう言った。
「こーんなとこで寝てちゃ、脳ミソまで溶けちゃうじゃない」
大きく両手を広げ、部屋を表現するユフィ。
「だから、アタシ達と行こう」
かなり無理矢理な理由に、一瞬意味が理解できないヴィンセント。
「ちょっと待て」
ヴィンセントは頭を抱えながら、手で制す。
「何故そうなる?」
「旅の連れが多いほうがいいもん」
やっぱり返事が早いユフィ。
あくまでも明るく、元気いっぱいのユフィ。
重い過去と罪を背負った、あまりしゃべらないヴィンセント。
お互い、全く正反対の相手である。
「それに!もしかしたら宝条に会うかもしんないし」
いきなり思いついたのがバレバレだが、ユフィはそんなことお構いなしだ。
「いや・・・しかし・・・」
「ほら!善は急げ、悪でも急げってね!はい決まり!」
「ちょっと・・・!」
ユフィはヴィンセントの右手をとり、出口に向かって走り出した。
「私は、一緒に行くとは・・・」
文句を言いたげなヴィンセントを無視して、引っ張るユフィ。
「このユフィちゃんが誘ってんだぞ?ありがたく思えっ!」
ユフィはいたずらっぽい笑顔を浮かべる。
「・・・・・・」
ヴィンセントは、初めて触れるユフィの手の体温を感じながら、
−こういう人間もいるのだな。
「・・・変わった奴だな、お前は」
ヴィンセントは少し笑みを浮かべる。
いきなりくるり、とユフィは後ろに振り返った。
「そーいや、さっきからお前お前って、アタシはユフィだってば!」
少し怒った表情で、ヴィンセントの手を握ったままユフィは言う。
「解った・・・ユフィ」
そして、ヴィンセントは初めてユフィの名前を呼んだ。
(END)
だいぶ前に書いたうヴィンユフィ出会い編でございます。
続きを書くべきか書かぬべきか……。
誰も住まない大きな屋敷、そしてニブル山へと続く道・・・。
「村、なくなったって、誰かから聞いたよ!」
焦げ茶色の髪を持った少女、ユフィはそう言って、辺りを見回した。
5年前、この村はある事故によってすべて燃え尽きてしまったと言われているが・・・。
「・・・ああ」
「クラウド・・・・・・オイラたちにウソついた?」
赤いたてがみを持った炎の魔獣、ナナキ(通称レッド13)は横に立つ青年に声をかけた。
「俺はウソなんか言ってない」
そう強気で言い切るクラウドと呼ばれた元ソルジャーは、大きく首を振った。
「俺は覚えてる・・・・・・あの炎の熱さを・・・・・・」
絞り出すように声を出すクラウド。
あたりは不気味なほど静まり返っている。
ユフィとナナキはなんだかわからない、という仕草をした。
「ま、とりあえずさ、休まない?ここまでくるのに結構疲れたし」
そう言ってユフィは宿の看板が出ている家を指さした。
「・・・そうだな」
クラウドは軽くため息をつき、宿に向かって歩き出した。
その後についていくユフィとナナキ。
「はい、いらっしゃい」
クラウド達が中にはいると、30過ぎくらいの宿の主人が声をかけた。
「・・・泊めてくれ」
クラウドは明らかに機嫌が悪そうな顔をしながらそう言った。
「一泊100ギルになります。よろしいですか?」
クラウドの周りの全員が、彼を見た。
「・・・しばらくここにとまる。前金、700ギルだ」
そう言ってクラウドはカウンターにお金の入った袋を置いてから、外に出た。
「あらら、行っちゃった・・・」
ユフィが呟く。
「おっちゃん、そう言うことだから、部屋借りるね」
ナナキがカウンターに手を突いてそう言ったものだから、店の主人はちょっと驚いた。
しかしすぐに営業用の顔に戻って、
「はい、ありがとうございます」
袋を大事そうにカウンターの奥へとしまった。
「ねぇねぇおっちゃん、この辺にマテリアたんまりありそうな所、ない?」
ユフィがカウンターに手を突いて聞く。
主人は少し眉をひそめたが、
「そうだねぇ・・・ニブル山にはもう使われない魔晄炉があるし・・・昔神羅の人間が使っていた屋敷もこの村の奥にあるし・・・」
その話を聞いてユフィの目が輝く。
「ホントホント!?」
「ユフィ、ユフィ」
と、いきなりナナキが水を差す。
「ダメだよ、勝手な行動しちゃ。クラウドが帰ってくるまで待とうよ」
ナナキのその言葉にユフィはぶーっ、と頬を膨らました。
ユフィ達が食事を終えて部屋に戻ってくると、クラウドが宿に戻っていた。
「クラウド!この村の外れにあったあのでっかい屋敷って何?」
いきなり目を輝かせたユフィに聞かれたものだから、たじろぐクラウドだが、
「あそこか・・・?」
クラウドはユフィを制しながらベッドに座る。
「あれは俺が小さいときから神羅の人間が使っていた屋敷だ。
確か神羅屋敷って呼ばれていたな」
あやふやな記憶を引っぱり出しているかのような表情で、クラウドは言った。
「そのまんまじゃん。ネーミングセンスわりー」
「知るか!・・・それで、何でそんなこと聞くんだ?」
クラウドがそう言うと、ユフィはますます目を輝かせて、
「だってだって、神羅の人間が使ってたなら、もしかしたらマテリアがざっくざっく」
両手を軽く広げて、楽しそうに言うユフィ。
「あのなぁ・・・」
頭を抱えるクラウド。
ベッドの上で丸まっていたナナキは、
「ユフィてばあそこ探索しに行くって聞かなくて、やっとオイラが押さえたんだよ」
ベッドに顔を埋めたまま、しっぽを振る。
「えー、神羅の研究所なんて、それこそ探りがいのありそうな場所じゃない」
ナナキのいるベッドの上に乗り、ナナキの顔をのぞき込むユフィ。
「何があるかわかんないじゃないか」
「それが楽しいんじゃないの!」
ナナキの言葉に、すかさず答えるユフィ。
「モンスターとかきっといっぱいいるよ」
「全部倒す!」
進むか進まないのかわからない言い合いが続く。
「だぁっ!いい加減にしろ!」
そんなやりとりを聞いていたクラウドがいきなり叫んだ。
びくっと肩をふるわし、目を点にするユフィとナナキ。
クラウドはユフィの額に人差し指をつけ、
「とにかく!ここにしばらくは滞在するが、ユフィ、絶対一人であの屋敷の中には入るんじゃないぞ」
「えーっ!ちょっとぐらい・・・」
「だめだ!」
いつになく強い口調のクラウド。
「・・・はぁーい・・・・・・」
ユフィは渋々返事を返した。
真夜中のニブルヘイム。
「・・・ばれなきゃいいのよ、ばれなきゃ」
神羅屋敷の近くの草むらから、ユフィが顔を出した。
昼間クラウドに言われたことが、かえって彼女の好奇心を刺激したようだ。
ユフィは足音をたてずに神羅屋敷の入り口に近づく。
「・・・うーん・・・」
入り口の鉄の門は、かなり錆び付いていた。
−音・・・立つよね・・・。
しばらく考え込んで、ポン、と手を打つユフィ。
ユフィは腰のホルダーから緑色のマテリアを取り出した。
そして右腕のカーボンバンクルにそれを装着する。
「ミニマム」
知識ある言葉を彼女が発すると、見る見るうちに彼女の体が小さくなった。
「よし」
鉄格子の隙間から屋敷の敷地内へ入り込むユフィ。
そしてドアまで走って近づく。
ドアは閉まりにくいのか、少し透き間が空いていた。
そこから中に入るユフィ。
「ミニマム」
もう一度魔法を唱えて、元のサイズに戻るユフィ。
「魔法と頭は使いようってね」
ユフィはそう呟いてから、自分の武器と防具にマテリアを装着し直した。
−さーて、どこから調べようかなー。
ユフィはわくわくしながら辺りを見回す。
屋敷の中は広く、天井からは錆び付いたシャンデリアが下がっていた。
ひび割れた窓からは、月明かりが差し込んでくる。
しかしあたりは暗い。
ユフィは慎重にあたりを確認しながら、まずは一番近い左の部屋へと入った。
そこには窓もなく、光は少ない。
ユフィは腰のホルダーから、手のひらにすっぽり入る、短い松明を取り出した。
「ファイア」
魔法の言葉と共に、松明に灯がともった。
あたり1メートル四方が明るくなる。
ユフィはきょろきょろと見回す。
何歩か踏み込むと、ユフィの足に何かあたった。
そこには床に少し色あせた紙の袋が無造作に落ちていた。
−手紙?
彼女はかがんで手紙を拾い、裏を見る。
そこにはローマ字で「Houjou」と、殴り書きされていた。
ユフィは眉間にしわを寄せながら中をあける。
そしてワープロで打たれたその手紙を読みはじめる。
『私の研究の邪魔をする者を全て取り除かなければならない。
タークスのあの男も例外ではない。
私はタークスの男に生態学的な改造をほどこし、地下に眠らせた。
もし興味があるなら探してみるがよい。
ただし・・・・・・これはあくまでも私がきまぐれでおもいついたゲームにすぎない。
無理につきあってくれる必要はない』
手紙は二枚あるようだ。
「次は・・・と」
『金庫のダイヤルはしんちょうにかつ、すばやくまわす。20秒以内だ。
少しでも行き過ぎてはいけない。
4つのダイヤルのヒントは・・・・・・。
ダイヤル【1】のヒント 酸素が一番多いハコのふた
ダイヤル【2】のヒント 空のない白と黒のウラ
ダイヤル【3】のヒント 2階のイスのそばのユカのきしみ・・・・・・
そこから左5歩、上9歩、左5歩、上6歩
』
「・・・人間?」
ユフィは首を傾げた。
そしてもう一度手紙を読み返す。
しばらくの沈黙。
「・・・・・・・・・んっふっふっふっ」
ユフィは少し肩をふるわして小さな声で笑い出した。
「よっしゃあっ!!これこそお宝の極意っ!!」
大きくガッツポーズをし、誰もいない空間に向かって叫ぶユフィ。
・・・ユフィはすでに自分の旅の本当の目的を忘れているようだ。
「この暗号を説けばいいのね・・・」
と、手紙の暗号の部分を読み返しているとき、ユフィは何か妙な違和感を見つけた。
−なんか、色違う。
持っていた松明を紙に近づける。
と、いきなり焦げた。
「うおっ!?」
びっくりして松明を落としそうになるユフィだが、ふと気づいて、
−あぶり出し?
そう思ったユフィは、その部分に下から松明を近づけてみる。
すると、
『ダイヤル【4】は【右:97】』
という文字が浮かび上がってきた。
「ふむふむ」
顎に手を当て考えるユフィ。
そして、手紙を手にその部屋を出た。
部屋を出て、ユフィは辺りを大きく見回す。
「とりあえず一番近い階段にでも行きますか」
そう呟くと、ユフィは階段に向かって走っていった。
階段を上ると、廊下が左右に分かれているのが目に入った。
「どちらにしようかな・・・天の神様の言う通り・・・」
言葉にあわせて指を左右に振り、
「よし、左」
ユフィは進行方向を左にとって、歩き出した。
松明の光だけを頼りに、暗い廊下を歩いていると、
「キシャアァァァッ!!」
突然ユフィの前に、カボチャの顔を持ったモンスターが5体現れた!
「うおおっ!!モンスターなんていたの!?」
いきなりのことであわてながらも、武器の風車を構えた。
一瞬の沈黙。
先に仕掛けたのはモンスター、ファニーフェイスだった。
ファニーフェイスは大きく息を吸い込んだと思うと、紫の霧を吐き出した!
「うぐっ・・・!」
口を押さえるユフィ。
司会が霞む。頭痛がしてくる。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
ユフィは大きく叫んで、霧を振り払った。
「こんのぉ!!」
ユフィは武器につけたマテリアに意識を集中する。
「サンダラ!」
激しい雷撃がファニーフェイスを襲う。
そのダメージに耐えきれず、3体が消滅する。
しかしまだ2体が残っていた。
「ムカツク!」
残ったファニーフェイスがユフィに体当たりをかました。
「あうっ!」
見事に顔面ヒット!
と、すかさずカウンターを返すユフィ。
悲鳴を上げながら、消滅するファニーフェイス。
「あと一体!」
ユフィは振りかぶって風車を投げた。
風車の刃は見事にファニーフェイスに直撃し、消滅する。
ユフィの手元に戻ってくる風車。
「やったぁ!」
ぴょんぴょんはねて勝利を喜ぶユフィ。
「て、喜んでる場合じゃない」
ユフィは投げた松明を拾い、先に進む。
廊下が終わると、部屋の入り口が3つあった。
まず、左の部屋をのぞき込んでみる。
そこには古ぼけたベッドが3つあった。
−・・・違うか。
今度は正面の部屋をのぞき込んでみる。
そこには観葉植物と、宝箱があった。
「やった」
ユフィは早速宝箱をあける。
中に入っていたのはユフィには必要のない物だった。
「なんだぁ」
残念そうに蓋を閉めようとするユフィ。
と、その手がとまった。
−酸素の多い・・・。
ユフィは手紙を読み返す。
そして宝箱の蓋の裏を覗き込んだ。
【左 36】
「あったあっ!」
という風にユフィは次々と数字を見つけ、とうとう金庫のダイアルをあけた。
そこから飛び出してきたのは、またしてもモンスターだったが。
「全く、このユフィ様にかなうヤツなんていないんだよーっだ!」
ロストナンバーの残骸にそう言い残して、ユフィはその横にあるマテリアに近づいた。
「おお!召喚マテリア!」
ユフィが拾った赤いマテリアは、ユフィにその知識を送り込んだ。
「・・・オーディーンか。いいもん手に入れちゃった」
そう言ってユフィはマテリアを軽く上に投げてから、自分のマテリア入れにしまった。
「もう何かないかなー」
金庫の中をのぞき込むユフィ。
「おっ?」
そこには金色に光る鍵が無造作に置いてあった。
「・・・もしかして」
ユフィは北条の手紙を読み返した。
そして鍵を握りしめて、一目散にどこかへ向かって走り出した。
「地下室ー!地下室ー!」
手当たり次第部屋をのぞくユフィ。
「もー!どこだー!」
ユフィは一番最後の部屋に飛び込んだ。
そこには、ベッドと本棚、それに壁に目立たないように細工されたらしいドアがあった。
「よっしゃー!ここだっ!」
ユフィはそのドアを開け、その下に広がっている螺旋階段を駆け下りた。
すごい勢いで走るユフィ。
「うう・・・ぐるぐる回って気持ち悪い・・・」
多少の胸焼けを覚えながら、ユフィは地下に降り立った。
地下は暗く、松明の光だけでは心もとない。
ユフィは微かな光だけを頼りに、地下道を歩いた。
そして、奥の方にドアが二つあるのを見つけた。
「どっちかだね」
ユフィは立ち止まって、少しうなる。
しばらくうなった後、
「鍵がかかってたら、そのドアが正解って事だ」
何とも当たり前なことに気づいたユフィは、まず隣にあった赤っぽいドアに手をかけた。
ドアノブをひねる。しかし開かない。
ユフィは思いっきりひねってみる。でも開かない。
「おおっ!ビンゴ!」
ユフィは鍵穴にさっき見つけた鍵を差し込む。
少し錆び付いたような音がしたかを思うと、以外にもあっけなく鍵は開いた。
ユフィはそっとドアを開ける。
開けたとたん、ユフィの表情が凍った。
あちこちに散らばる人骨、朽ち果てた棺桶、その中に眠る異形の生物・・・。
それは、ここでどんな実験が行われていたかを物語っていた。
神羅、いや北条の狂った研究心も。
ユフィは少しの間硬直していたが、
「骨なんかで・・・びびってどうする!!」
気合いを入れ直し、意を決して中に入るユフィ。
−モンスターが飛び出てきたりして。
その考えをすぐにかき消す。
と、何かが聞こえてきた。
びくうっ!と肩を震わすユフィ。
しかしよくよく聞いてみると、それは人間のうなり声だった。
うなり声と言うより、うなされているような声だ。
−やっぱり、誰かいる!
その声の出所をたどるユフィ。
ゆっくりと奥に入っていくと、その声は大きくなっていく。
そして一番正面にあった棺桶にたどり着いた。
「もしもーし」
ユフィはおっかなびっくり棺桶の蓋を叩く。
何も反応がない。
「もしもーし!!」
がんがんがん!と乱暴に蓋を叩く。
と、うなされ声が止まった。
「・・・・・・私を悪夢から呼び起こすのは」
棺桶の中から低い男の声が聞こえてきた。
「誰だっ!」
ばん!と棺桶の蓋が跳ね上がる。
思わず後ずさるユフィ。
棺桶の中の男が上半身だけ起きあがる。
その姿を見て、ユフィは思わず息をのんだ。
流れ落ちる長い黒髪。
額に無造作に巻かれた赤いバンダナ。
面長の整った顔立ち。
そして、
切れ長で冷たい光を放った赤い瞳。
−うおおっ!めちゃくちゃ美形っ!
心の中で叫ぶユフィ。
「・・・・・・見知らぬ顔か」
その声にはっとするユフィ。
「出ていってもらおうか」
いやに冷静なその低めの声に、ユフィは少しむっとくる。
「何よ!」
そう言って棺桶に近づくユフィ。
「アタシがどんなに苦労して、ここの鍵を見つけたって思ってんのよ!?」
ユフィは腰に手を当て、仁王立ちでその男を見下ろした。
さすがに男もこの行動に驚いたらしく、目を点にしている。
「だいたい!隠されたキャラクターっていうのは、見つけた人を感謝して、仲間になりましょうってのが相場じゃないの!?」
びしっ!と男に向かって指を突きつけるユフィ。
「なんの話だ・・・それは・・・」
「昔マンガで読んだ」
それを聞いて、男はため息をついた。
「・・・変わった奴だな。お前は」
頭を抱え、もう一度ため息をつく。
「だいたいねー、人と話するときくらい棺桶から出てきなさいよ!」
暗く重い空気に閉ざされていたこの部屋が、ユフィの場違いな口調で明るくなったような気がした。
「・・・・・・」
すでにユフィのペースに乗せられていることに、いささか不満を覚えながらも、男は棺桶から出て立ち上がった。
座っていたのでよく分からなかったのだが、男はかなりの長身だ。
ユフィと比べてみても頭一つぐらい、身長差がある。
ユフィは一瞬たじろいだが、すぐにいつもの調子に戻って、
「あんた、何者?こんなところで寝てるなんて、ふつうの奴じゃないだろうけど」
ユフィの言葉を聞いて、男は何か言いかけたが、
「あ、こういう場合はアタシから名乗るもんか」
こういうときの彼女は、何故か自己中心的ではない。
「アタシ、ユフィ・キサラギ。世界一のマテリア・ハンター」
胸を張り、男を見上げ、元気よく言うユフィ。
「・・・マテリア・ハンター?」
聞き慣れない言葉に、男は眉をひそめた。
「ずいぶんと怪しい職業だな」
「ほっといて!
それより、アタシが名乗ったんだから、あんたも名乗んなさいよ」
ころころと表情の変わるユフィを見ていると、男の警戒心は少しずつ緩んでいった。
「私は・・・・・・元神羅製作所総務部調査課、通称タークスの・・・・・・」
少しの沈黙。
「ヴィンセントだ」
その男、ヴィンセントは表情を変えずにそう言った。
「タークス?」
あまり好きではないその単語に、ユフィは眉をしかめた。
「元タークスだ。今は神羅とは関係ない」
「ふむふむ」
その言葉を聞いて少し安心したのか、ユフィは一人頷く。
「そういや宝条の手紙にもそんなこと書いてあった・・・」
「宝条だと?」
今度はヴィンセントが眉をひそめる。
「お前、宝条を知っているのか?」
初めて、彼の顔に怒りに似た表情が浮かんだ。
いきなりのことでちょっと驚くユフィ。
「ちょ、ちょっとね。この前、コスタ・デル・ソルで見たもん」
「宝条・・・」
そう呟いて、ヴィンセントは何か嫌なものを思い出したかの様な顔をした。
「ねえ、何であんた、いや、ヴィンセントだっけ。こんな所で寝てんの?」
ゆっくりぐるぐると、ヴィンセントの周りを回るユフィ。
「・・・何故答える必要がある?」
「聞きたいから」
「・・・・・・」
当たり前と言えば当たり前な回答である。
ヴィンセントは、この娘が好奇心のみで行動していることを察した。
「・・・この屋敷は、悪夢のはじまりの場所だ」
虚空を見つめ、重い口を開くヴィンセント。
「・・・・・・昔、この屋敷では神羅カンパニーがあるプロジェクトを行っていた」
神妙な面もちで、ヴィンセントの話に聞き入るユフィ。
「ジェノバ・プロジェクトと名付けられたそれは、ある古代種を復活させることを目的としていた」
「ジェノバ?」
クラウドたちがよく言っていた言葉だ、と、ユフィは思った。
「・・・・・・そして、ある女性が実験台として自ら名乗りを上げた」
ヴィンセントの表情が、微妙にゆがむ。
「彼女の名は、ルクレツィア」
ユフィは、ヴィンセントの目が一瞬細くなったのを見た。
「・・・ルクレツィアは、ジェノバ細胞を埋め込んだ子供を産むこととなった」
淡々と語るヴィンセント。
「私はその人体実験に反対した。しかしそれでも、彼女と研究者の研究欲は消えなかった」
そこでヴィンセントは一旦言葉を切った。
長い沈黙が地下室を包む。
「・・・それで?」
ユフィはその沈黙に耐えきれず言葉を発した。
「・・・・・・しばらくして、ルクレツィアに子供が産まれる・・・」
ユフィは口の中の唾液を飲み込む。
「その子供の名は・・・セフィロス」
「セフィロス!?」
ユフィは思わず声を上げた。
「・・・セフィロスを知っているのか?」
問われて言葉を返せないユフィ。
彼女は知っているのだ。
自分の故郷を焼き尽くした相手の名を。
「・・・新聞とかで見たの。有名だもん、英雄セフィロス」
あえて彼女は話を濁した。
「それより、セフィロスが生まれて、どうなったの?」
「ああ・・・」
ヴィンセントは軽くため息をはく。
「私は、実験のことで研究責任者の一人、宝条に抗議した。
何故あんな、人体実験を実行したのかを」
ヴィンセントは右手を口元に当てた。
「そのことで争論となり、宝条は私を殺した」
「??」
ユフィはすこし混乱した。
その時ヴィンセントが死んでいるのなら、ここにいるヴィンセントは何なのか?
「宝条は私の脳だけをそのままに、体を改造した」
ユフィは手紙の内容を思い出す。
「・・・・・・次に目覚めた私が見たものは」
ヴィンセントは首を振った。
「怪物と化した自分の姿だった・・・・・・・・・・」
また、沈黙があたりを覆う。
ユフィは何かの感情に襲われていた。
「・・・そっか。それでここで寝てたって訳か・・・」
ユフィは頭をかく。
「全く、宝条ってとことん変な奴だよね!
女の子はべらかしてたって思ったら、改造趣味まであったなんてっ!」
ユフィは、何か解らないこの感情を振り払うかのように言う。
「今度あったら、アタシが殴り飛ばしちゃるっ!」
シュシュシュ、と空で拳を切るユフィ。
そんなユフィを見ながら、ヴィンセントは疑問を感じた。
何故この話をしてしまったのか?
自分の中で封印していた、この悪夢のような話を。
「いや、リミットで吹き飛ばした方が気持ちいいかな・・・」
何故自分はこんな娘に話してしまったのか?
しかし、いくら考えてもその答えは出なかった。
代わりに、もう一つ疑問が浮かんだ。
「お前・・・私が怖くないのか?」
いきなり聞かれ、目をぱちくりするユフィ。
「怖いって・・・何で怖がる必要があんの?」
ユフィはヴィンセントの顔をのぞき込む。
「いくら過去が暗くたって、こーんな美形さん怖がっちゃもったいないじゃない」
ユフィらしい答えが返ってきた。
ヴィンセントはそれを聞いて、思わず頬が緩んだ。
「あ、笑った」
はじめてみるヴィンセントの笑顔にユフィもつられて笑顔になる。
「やっぱり・・・だよね」
ユフィは一人で何か呟いてから、
「ねぇヴィンセント、アタシ・・・いや、アタシ達と一緒に行こう!」
ユフィは、ヴィンセントの赤い瞳をのぞき込み、そう言いきった。
「・・・は?」
長い沈黙の後、ヴィンセントはそう言った。
「こーんなとこで寝てちゃ、脳ミソまで溶けちゃうじゃない」
大きく両手を広げ、部屋を表現するユフィ。
「だから、アタシ達と行こう」
かなり無理矢理な理由に、一瞬意味が理解できないヴィンセント。
「ちょっと待て」
ヴィンセントは頭を抱えながら、手で制す。
「何故そうなる?」
「旅の連れが多いほうがいいもん」
やっぱり返事が早いユフィ。
あくまでも明るく、元気いっぱいのユフィ。
重い過去と罪を背負った、あまりしゃべらないヴィンセント。
お互い、全く正反対の相手である。
「それに!もしかしたら宝条に会うかもしんないし」
いきなり思いついたのがバレバレだが、ユフィはそんなことお構いなしだ。
「いや・・・しかし・・・」
「ほら!善は急げ、悪でも急げってね!はい決まり!」
「ちょっと・・・!」
ユフィはヴィンセントの右手をとり、出口に向かって走り出した。
「私は、一緒に行くとは・・・」
文句を言いたげなヴィンセントを無視して、引っ張るユフィ。
「このユフィちゃんが誘ってんだぞ?ありがたく思えっ!」
ユフィはいたずらっぽい笑顔を浮かべる。
「・・・・・・」
ヴィンセントは、初めて触れるユフィの手の体温を感じながら、
−こういう人間もいるのだな。
「・・・変わった奴だな、お前は」
ヴィンセントは少し笑みを浮かべる。
いきなりくるり、とユフィは後ろに振り返った。
「そーいや、さっきからお前お前って、アタシはユフィだってば!」
少し怒った表情で、ヴィンセントの手を握ったままユフィは言う。
「解った・・・ユフィ」
そして、ヴィンセントは初めてユフィの名前を呼んだ。
(END)
だいぶ前に書いたうヴィンユフィ出会い編でございます。
続きを書くべきか書かぬべきか……。

